第十三話・現代着物考「ココロを飾るか?カラダを飾るか?」
着物が、私にとって、まだ日用品でないとき。着物は、取り澄まして、気取ったものだと思った。とにかく綺麗に着飾る、華やかに振舞う。それが着物だと思った。そして厳格なルールに守られた伝統の衣装だと思った。
けれども、それらは、すべて思い込みにすぎなかった。
着物をクシャクシャになるまで着たこともない、ほころびるまで着たこともない、シミがつくまで着たこともない、着物と正面から向き合ったことのない人間の思い込みにすぎなかった。(写真/古瀬惠一)
うわべが綺麗ならそれでいい。見てくれが優先。そのために、厳格なルールを守る。着づらくても、着付けに時間がかかっても、着心地悪くても、表面が綺麗ならそれでいい。我慢しながら着るもの、忍耐が要る衣類、それが着物だって、そんな風に周囲の人々が私に印象づけた。
ルール? 誰が決めたの。知識? 何を、いつの時代を基準に知識というの?
着物は何世紀にも渡って歴史がある。その着物を、この半世紀に作られたにすぎない、学校や呉服屋が掲げたルール、それが全てで、それが正しいように広めてしまう。正しいこともあろう、でも、それが全てではない――これも正しい。
たしかに、そのルールを広めれば、物は売れるだろう。「この器具をつかってこう着付けねばならない」「この季節にはこれがなければならない」「ここの巾は○×センチなければならない」「ならない」に拘束され、個性と実用性を喪失していった着物。
着付け一つにも個性があっていい。袖巾一つにも自分の好みや、生活様式に応じた、自分なりの長さがあっっていい。むしろ、それがあって、はじめて「生きた着物」実用品だ。
着物はけっして古典芸能ではない。能や歌舞伎のように、保護され進化をやめた、化石的な文化ではない。着物は衣類だ。衣類は、生きた人間が袖を通すもの。着物も生きて、進化しなきゃ、衣類じゃない。
着物はルーズで、柔軟性があって、個性がある衣類。「テキトー」に、「あんばい」よく、「そのときそのとき」で、着付ける実用的な衣類だ。
着物を「ならない」で縛り付けるのはいったい誰?
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